
コンクリート基礎に鉄筋が入っているかどうか、その配筋ピッチはどれ位かをセンサーを
使って調べます。1981年以前の建物では鉄筋が入っていない場合が多いです。
無筋の場合は耐震診断の際に基礎ランクが下がり、評点も下がりますが、鉄筋が入ってい
なくても、地盤の良い場所であって現状でひび割れがなければそれ程心配する事はないと
思います。地盤の良くないところでは、ひび割れが生じているケースが多く見受けられま
すので、その程度によって段階的に、
・ひび割れ箇所の補修
・ひび割れ箇所付近の補強
・既存の基礎に抱き合わせて新たに基礎を設置する
など、状況に合わせて検討する事になりますが、上部構造の耐力壁の強さや位置も関係し
ますので、基礎のみにとらわれる事なく全体的な計画の中で、コストを抑えた改修の方向
性を考える事が大切です。

改修を前提とした調査では、コンクリート基礎の強度調査を行います。
コンクリート基礎の立ち上がり部分を円筒状に抜き取り、機械で潰して強度を計測する
方法によって正確な数値を把握できますが、コストもそれなりにかかりますので、ビルや
マンション等の大きな建物で採用される事が多いです。
住宅の場合は簡易な方法を使う例が多く、写真のようなテストハンマーを使い、打撃時の
反発力から強度を推定します。測定誤差を小さくするために20ヶ所の平均値を採用します。
耐震改修でコンクリート基礎と柱の根元をアンカーボルトで緊結する際に、コンクリートの
強度が低くもろい場合は、柱の引抜き力でアンカーボルトがコンクリートごと抜けてしまう
事もありますので注意が必要です。コンクリート強度が低い場合は、既存の基礎に抱き合わ
せて新たな基礎を新設する事で対処します。

これも蟻害による柱の腐食(腐朽)です。ドライバー下の土台の被害は少ないのに柱だけが白アリに食われていました。
最近の建築では、大きく分けて以下のように木材の防腐、防蟻措置を施します。(住宅金融普及協会 木造住宅工事仕様書)
1.木材自体が腐食・白アリに強いものを使う。
2.木材に防腐、防蟻薬剤を浸透させる。(工場にて)
3.木材に防腐、防蟻薬剤を塗布する。(現場にて)
1 の方法では土台にはヒノキやヒバ等を使いますが、素材の価格が高いのがネックです。
2 の方法は土台によく使われています。柱は室内に面する場合がありますので、薬剤の蒸散を考えると人体には好ましくないと考えられます。
3 の方法は現場の建方後に行われる事が多いため、柱下部など浸透しにくい箇所が弱点になりやすいです。また、保証期間が一般的には5年程度ですので、白アリ害の危険性がある地域・場所では再施工が必要です。

1階床下の写真です。
写真はフラッシュで明るく見えますが、狭くて暗い床下なので懐中電灯を片手にホフク前進しながら柱や土台をドライバーで突きながら進みます。
柱の外観はそれ程ひどくは見えませんが、ドライバーを差すと抵抗なく入り、表面を除いてほぼ全断面が蟻害で空洞化しています。
柱左側の隅に沿って泥土のような細い筋が昇っているのが白アリの蟻道です。このケースでは階段裏部分のため、柱の取り換えに際しては階段の撤去復旧も伴います。

浴室出入り口部分の柱の腐食です。
土台の四角い穴は柱を差すホゾ穴で、柱の根元の半分以上が腐食してなくなっているのが分かります。
古い物件では水回りの構造体がこのようになっているケースが少なくありません。
この場合は、浴室からの漏水や湿気による腐朽菌と、そのような木の状態を好む白アリの蟻害が原因です。
漏水箇所の手直しと土台・柱を交換する事で対応可能です。もちろん、合わせて白アリ駆除も必要です。

小屋裏調査時の写真です。中央少し左側、断熱材の向こうに筋交いが見えています。
耐震診断調査では、筋交いの種別(材料のサイズ)と位置を確認します。
接合金物も確認しますが古い建物では釘2本のみがほとんどで、プレート金物より評価は落ちます。
診断計算時には確認できた筋交いのみをカウントするのが原則ですが、狭い小屋裏でどこまで行けるかが勝負どころです。
確認できなければゼロカウント、しかしそれでは評点が悪くなり余分に補強しなければならないわけですから、あって欲しいと探す訳です。
写真の細い部材は天井下地で、乗れば下に抜け落ちますので太い部材を伝わっていきます。調査の中ではアクロバットな部類で、体力勝負!

小屋裏では躯体や漏水、筋交いの状況を調査します。
写真では屋根を支える母屋(もや)が受材の梁から浮き上がり、はずれそうになっています。
建物は地震や風によって動きますが、繰り返し影響を受けると徐々にこのような状態になる事があります。
この事例では母屋と梁を緊結して補強を行いました。

レーザー計測機を使い、室内の水平・垂直レベルを測定します。( 畳敷きの場合は膨らみがありますので、周辺の木部位置での測定です。)
各階の測定結果によって、以下の傾向を推定します。
・床レベルの測定 : 建物の不同沈下、床構造材の耐力不足・劣化
・壁の傾きを測定 : 建物の不同沈下、耐力壁の設置バランスや床構造材の耐力不足・劣化
許容値を超えている場合は原因を特定して、補強対策の検討を行います。

雨戸の戸袋内部の写真です。戸袋内部の壁合板が漏水で劣化しています。
このような状態では耐震診断を行う際に耐力壁としてカウントできませんし、内部の構造材への影響も考えられます。
このケースでは床下の土台が腐朽していました。

漏水ー1物件のバルコニー外壁と1階屋根の取り合い部分です。
通常は端部瓦は割らない正規の状態で、その上に水切り金物等をかぶせます。この様な状態では雨水は抵抗なく瓦下に流れ、さらには防水シートの端部から屋根裏に入り込んでしまいます。
目視調査で全体を満遍なく観察していると、問題がありそうな部分が自然と目に入ってきます。そのような、普段の設計と比べて違和感を感じる部分に問題があるケースが多いものです。